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血が大嫌いなわたしが臨んだ人生初の手術

半べそで臨んだ人生初の手術 エッセイ

人生で初めての手術をした。

胸に腫瘍があると分かったのが1年ほど前。色々と検査をしたが悪性ではないとのことでずっと経過観察をしていた。そして少し前に再検査をし、先生と相談した結果、腫瘍をとる手術をした。

手術といっても入院はしない”日帰り手術”。麻酔も局所麻酔だけ、2時間くらいで終わる予定だと先生からも言われた。要するに簡単な手術だ。

しかし、だ。

しかし、なのだ。

わたしは血が大嫌い。

ただ嫌いなのではない。大、大、大嫌いなのだ。

家で料理をしているときに包丁で指を少し切るなんてことが起こったら、まぁ大変。傷口を押さえながら、心が落ち着くまでその場でうずくまる。

病院で採血中に涙が出て、頭が真っ白になったこともある。一瞬、意識がなくなったこともある。だからいつも注射をするときは必ずベッドに横にならせてもらい、目をつぶって血を抜かれる数秒を耐え抜く。

「ベッドで横になって注射してもらいたいんですけど…」

アラサーになるというのに、採血のときに毎回こう言わなければいけないのはめちゃくちゃ恥ずかしい。

今まで採血を担当してくれた看護師さんは基本的に「このほうが大丈夫そうかな?」「今は気分どう?」と声をかけてくれる方ばかりだった。恥ずかしいと思っている自分がさらに恥ずかしくなるくらいに優しい。

まぁ、こんなに血が嫌いな人間なのだから、手術なんて想像するだけでムリ!

手術の数週間前に主治医の先生から手術の説明があった。

「乳輪下2cmくらいを切って…」

(あぁ、やっぱ切るよね(´;ω;`)ウッ…。血も出るよね。)

「局所麻酔で…」

(えっ!局所麻酔?!ということは意識がある状態で切るんか?!)

意識がある状態で手術したら手術中に嗚咽するレベルで泣くのは確実だったので、主治医の先生には「麻酔みたいに眠くなるようにしてもらえますか」とお願いしておいた。

手術後は当分の間、趣味であるジム、サウナに行くことができなくなる。

看護師さんに「運動は出来ないと思うけど、サウナは行けますか?」と聞いたら「サウナ?!だめ!絶対だめよ!」と学校の先生に注意されるかのように釘を刺されてしまった…。わたしより10歳は上の看護師さんだったからか、小学校で優しい先生と面談している小学生みたい)

ということで、手術前は毎日のようにジムとサウナに行きまくった。

サウナにいる女の子

手術の前日もジムに行って汗をかき、サウナでも汗をかいてめちゃくちゃ準備万端!と思ったけど、やっぱり前日はあまり眠れなかった。

手術は朝8時半から。

手術はメイクも、コンタクトも禁止なので朝が早くても時間は余裕だった。朝一番の時間だからか病院も静か。いつもは患者さんでごった返している受付を通り過ぎて手術室がある階に向かった。

看護師さんに案内されてた場所は思っていたよりも普通で待合室のようだった。手術着に着替えて当日の確認事項を確認する。

手術を担当してくれる看護師さんはふたり。ひとりはベテランそうで、もうひとりは指導をしてもらいながらだったので新人さんだろうか。ふたりともとにかく優しい。

少しして先生がやって来た。

手術着を着ている。よくドラマで見るあの緑のやつ。

(ああああぁぁ、手術だああああ)

緊張しているせいか目が据わっていて無表情なのに、心臓はキューっと締め付けられるくらいソワソワしてきた。

ソワソワ、ソワソワ。

歩いて手術室に向かう最中に先生が「昨日は眠れましたか?」とか、色々と声かけしてくれたのに心ここにあらずなわたしは「まあ…。」「そうですね…。」とか反抗期の高校生みたいな返事しかできなかった。

銀色に囲まれた無機質な手術室。真ん中にポツンと置かれたベッドがやけに目立っている。

ベッドに横になってすぐに右手の甲に点滴をされ、体に装置がいくつか付けられると自分の脈拍が手術室に響き渡り始めた。

ピッ…ピッ…ピッ…。

気がついたら涙が頬をつたっていた。

「目隠ししましょうね~」

涙が出ていることに気がついたのか、即座に先生がタオルを持ってきて、わたしの目を覆ってくれた。めちゃくちゃ患者のことを見ている気が利く先生だ。

「五十嵐さん、もうすぐ終わりますからね」

ん?

んん?

終わる?もう終わるの?

その後すぐに「手術、終わりましたよ」という声が聞こえた。すぐに眠くなる薬が効き始めていたようだった。タオルで目を覆われてから記憶がない。

ボーっとしているうちに看護師さんに靴を履かせてもらい、車いすに乗せてもらって手術室を出た。

少し時間がたったらひとりで歩けそうだったので帰宅。家族には迎えに来なくていいからね、と伝えていたので病院の前にいたタクシーでひとりで家に帰った。

手術でとった腫瘍はこれから病理検査にかけられる。

病院の前に停まっているタクシー

手術後はちょうど年末年始だった。

折角の年末年始なのに、旅行にも、ジムにも、サウナにも行けない。せっかくなので前々からやろうと思っていた手芸をすることにした。

サイズが合わなくなったジーンズをリメイクし、トートバックを作ろうと思ったのだが、そもそもミシンも学校の家庭科の授業以来まともに使ったことがないので、まぁ時間がかかる。紅白が始まる頃に作り始めたのだが、やっと半分くらい出来あがったと思った頃には紅白が終わっていた。(疲れて年を越す前に寝てしまった)

その後、裏地も、内ポケットもつけたので丸3日かかったのだが、無事に完成。

バッグの他にも刺繍をしたり、本を読んだりしていたら割とあっという間に時間が経っていた。インドアな趣味も割といける質なのかもしれない。

ハンドメイドのバッグ

病理検査の結果を聞きに行く日。

緊張して診察室に入ると、結果が記載された紙を見せながら先生が説明を始めた。

「良性の腫瘍でした。問題ないですよ」

「よかったぁ!」

他にも説明してくれていたのだが耳に入ってこず、「よかったぁ!」という言葉が自然と出ていた。

先生もわたしと同じように「よかった!」と言いながら、パソコンでカルテに[よかった!!]と打ち込んでいる。他の先生も見るかもしれないカルテにそんな風に書いたら変に思われちゃわないかな、と思ったらなんだか先生が可愛くて、可笑しかった。

手術前の緊張しているわたししか知らない先生からしたら、わたしから元気な「よかった!」が出てくるとは想像もしなかったのだろう。診察室にはわたしと先生の「よかった!」という言葉と「ふふふっ」という笑い声が充満した。

また半年後に再検査をして問題なければ、本当の本当に終わり。

手術直後の傷跡は直視できないほどグロテスクで(このまま変なウイルスに感染してゾンビになっちゃうんじゃないか)と思っていたが、今ではほとんど目立たないくらいにキレイになった。

相変わらず血も苦手だし、手術もイヤだけど、もし次また手術になったとしても今回よりは緊張しないだろう。

半べそはかいたものの、身体的にも、精神的にも、思っていたより負担が少なかった人生初めての手術。それは確実に優しく声をかけてくれた主治医の先生、看護師さんたちのおかげだ。

本当にありがとうございました。

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